子供の頃の一番古い記憶って、なにを思い出しますか?
中には生まれてくる前の記憶(母親のお腹の中にいる頃)まで遡れる人もいますね。
きのうの晩御飯のメニューさえ思い出せない記憶力の無い僕には到底無理な芸当です。
僕の一番古い記憶は幼稚園児の頃、うっすら思い出せるふたつの場面です。
今思い出しても恥ずかしい記憶
ひとつは母親に迎えに来てもらった雨の日のこと。
傘を差しながら友達や先生にバイバイの挨拶を一生懸命していました。
よほどみんなにきちんとバイバイしたかったのか(律儀なやつです)、後ろ歩きになりながらも全員にバイバイしていました。
幼稚園の園庭には遊具としてタイヤを埋めたものや、カメの置き物なんかがあったんですが、前など見ずに必死にバイバイしていた僕は、案の定カメの置き物に当たってすっ転び、雨の中泥だらけのびちゃびちゃになって幼い僕大泣き、先生困惑、友達大爆笑、母親大迷惑&ドン引き。
なにもそんなことを一番古い記憶として残さなくてもいいのに、なんで覚えてんでしょう?
気になると他が見えなくなってやらかしてしまう、ほろ苦い記憶です。
ちなみにこういうどんくさいところは、今もほぼ変わらない(成長していない)です。
原体験になってる記憶
もうひとつの記憶は当時、子供たちが自由に工作とかして遊べるようにと、誰かの親さんがたくさんの四角い発泡スチロールを幼稚園に提供してくださった中でのいちシーンです。
私含めた園児らはそれを使って自由に工作をしていました。
幼稚園児なので、クルマとか電車とか飛行機とか、自分の理想の家とか部屋とか人形とか、発泡スチロールをブロックのように組み合わせて接着したり、マジックで色をつけたり絵を描き足したりして工作していました。
僕も同じように工作に没頭していたんですが、その過程が変だったようです。
私自身は今考えても別になんとも思わないことなんですが…
みんなは発泡スチロールをそのまま組み合わせてモノを作っているんですが、四角形なのでカタチに自由度がなくて、カクカクしたモノを作っていました。それくらいの年齢で、与えられたモノがそのカタチならそうするものなんでしょう。
貧乏性だったのか偏屈だったのか、それともその日は機嫌が悪かったのか、あるいは何かが降臨していたのか、幼い僕は自分が作りたいものには斜めの線とか曲線とかもあるのに、四角で作らなきゃいけないことが嫌でした。
さらにもとの四角いカタチのままだと、たくさん提供してもらった素材もすぐに消費してしまい、取り合いになることも(そしてその争いに負けることも)目に見えていたし、なにより限られた創作資源がもったいない。
当時の幼い僕は、使いこなせるかどうかも考えず、おもむろにカッターやハサミを持ち出し、四角の発泡スチロールを違うカタチのパーツに仕立て上げて、遙かなる創作活動に邁進していました。
カッターやハサミの使い方がよほど危なっかしかったのか、他の誰もそんなことしていなかったからなのか、
(僕も知らなかった。だって自分の工作に没頭していて他人のやってることなんて目にも入らなかったし)
先生が聞いてきました。
なんでそんなことをしているの?(あんたツールもまともに使いこなせねーんだから余計な心配させんなよ…)
こうした方が発泡スチロール増やせるよ
カタチもいろいろつくれるよ
先生ずいぶんビックリして(あきらめた、のかもしれない)、
そんな工夫をしていたんだね!凄いね!
とても良いアイデアだからみんなにも教えてあげようよ!
なんか知らんけど囃し立てられて、なりゆきで壇上に上げられるまま、調子に乗った僕はみんなに説明しました。
そのままのカタチで使うことは限られた数の素材がもったいないよ
こういうカタチを作って切り貼りしたらこんなふうに作れるよ
おぉーすげー(群衆A)
ほんとだー、俺もやろー(群衆B)
ひそひそ、〇〇君(僕)すごいねー、かっこいー(群衆内女子たち)
※これは無かった…
という記憶です。
もとの素材の条件が合わないと感じたから工夫して、他の人に邪魔されたくなかったから(恥ずかしかったから)隅っこでひっそりと工作していただけなんですが、それを先生に気づいてもらえて褒められ、とても良いアイデアだからみんなと一緒に共有しよう、と言ってもらえて。
この時に幼い僕は、自分のやったことを認められて、その良さをみんなに伝えることを求められた「気持ち良さ」を、初めて味わった気がします。人間誰でも、褒められたら嬉しいもので、僕の場合はそれが「アイデアをカタチにする」という工作のお遊戯の中での出来事でした。もしかしたら今も幼い頃から成長もせずに、チビの頃に味わったように、驚いてもらいたくて、認めてもらいたくて、デザイナーなどという稼業を続けているのかもしれません。
古い記憶を都合よく解釈していると言えばそれまでかもしれませんね。
でもそんなストーリーで原体験と話せるのはなんか素敵だと思うんですが、どうですか?